前回はこちらへ 兄に連絡して、またGPSで居場所を探してもらうしかないでしょう。その前に、わたしもここから立ち去らないと。「ねえ、ドットコム、どうしよう、これから」「じゃ、おれ、君のことミユって呼んでいい?」「だめ」「ミユキ?」「はい。それでお願いします」 わたしのことを、ミユと呼んでいた彼がいて、そいつとの辛い別れのことを思い出すので、ミユはダメ。わたしをミユと呼べるのは彼だけ。遠くの学校に転校していった村越弦……。ユズ・ミユの愛は永遠なんだから。 そのときです。 バリバリバリと暴走族のような音が響き、見上げるとホテルの上の方の階で灯りが激しく点滅しました。 どっと玄関から男たちが出て来て、彼らの呼んだらしいクルマが次々やってきて、慌てて乗り込んで走り去っていきます。「ヤバイね」 なにかが起きたのです。もう、父は死体でしょうか。「ゆっくり逃げよう。慌てていると怪しまれる」 わたしたちは恋人同士、または母じゃないですが、客をゲットした娼婦とバカな外人みたいな感じでそぞろ歩き。 駅に向かいます。「タクシー乗りたいけど、記録されるからダメだ」と彼。「駅の方だって、カメラあるよ」「うん。だから、駅が見えてきたら、バラバラに動こう」「えっ? そうやって1人で逃げる気?」「違うよ。そんなことしないよ。ただ、駅前になったら、右と左に分かれて、最後に駅の改札で会う。そうすれば、ぼくらが関係しているとは思われないよ」 そう言いながら、彼はポケットからくしゃくしゃの布を取り出し、それを広げると、かっこう悪い帽子になりました。「どう?」「サイテー」「ふふふ。それでいいんだよ」「じゃ」 とわたしは黒いマスクを取り出しましたが、「それはやめて」と彼に取り上げられました。「怪しすぎる」「ずるいじゃん、わたし変装ないし」「じゃあ、レジ袋でもかぶれば?」「ひどい。コンビニ行ったらもろ動画残るじゃん」「下向いて歩け」「マジかよ」「スマホ見ながら歩いているやつ、珍しくないよ」 しょうがない。それで行く。「信じていいんだな、ドットコム」「ああ。おれは日本生まれの日本育ちの日本男児だ」 右側から彼は駅へ進み、左側からわたしは駅に進む。下を向いて、手の平を見て。まるでスマホでも見ているようなフリをして。 そして改札。「クソ野郎」 ドットコムは、現れないのです。 しばらく待ちましたが、待っているのも不自然なので、きっぷを買うふりをしたりしながら、うろうろしていたのです。でも、駅前にパトカーが2台やってきて、その赤い点滅を見ているとこれはヤバイと思い、しょうがなく電車に乗りました。 やられた。 ドットコム。まるで信用できない。 でも考えてみれば、彼は兄が見つけてきた男です。父は兄の指示によってあの違法な銃を手に入れたのです。つまり兄はすべて知っている。 いまに見ろ。 家の玄関。そういえばこの家、ローンだろうに。父はそれを払い終わっていないのではないか。いや、父は死んでしまえばおそらく生命保険で……。 生命保険……。 なんだか無責任にワクワクしてくるのです。あのハレンチ野郎の父がこの世にもういないと思うと、胸のどこかがギュッと縮まるような痛みがあって、「ああどうしよう」とか「悲しい」とかそんな感情がいっきにわたしを支配して、なにもできなくなりそうです。 だから、あのことだけを考える。つまり、わたしの布団の中に頭を突っ込んでいたときの父だけを思い出すのです。あんな野郎は死んで当然。 血のつながっていない、どこのウマの骨とも知れないわたしと兄を育ててくれた父。母は浮気し放題で、売春までしていた勝手な女だったのに、そういえば、仲はよかったよね。 よかったのかな。悪かったのかな。それすらも、薄ぼんやりとしています。家族が揃った思い出がほとんどない。父か母かどちらか。兄はいないし。少なくとも、わたしに対して母は文句ばかり言っていたし、「ちゃんとしろ」とか「大人でしょ」とか顔を合わせるとそんなことばかりだった気がする。 母はいまもどこかで生きている。 あれは、死なないタイプだ。あの現場から、まるで「お先に……」と消えるバイトみたいに忽然といなくなる技はすごい。ろくに服も着ていなかった。あのわたしが殺した男の血とか脳みそとか体にかかっていると思うけど、今ごろ似たようなホテルに入ってシャワーを浴びているのでしょう。 鼻歌でも歌いながら。 この一戸建ての玄関(すぐ横はガレージ)に、街灯に照らされて大きな物体があるのです。 宇宙人が襲来したのか。ミサイルでも落ちたのか。 近づくと、それは段ボールでした。目が悪いなあ、わたし。 人が楽に入れるほどの大きな段ボール箱が3つ、ふたが開いたままで重ねられ、間から緩衝材やビニールがあふれ出ています。 金持ちの兄が、なんかすごいものを買ったんじゃないか。 急いで家に入ると、兄がいました。「早いな。もう殺したのか?」 すっかり忘れていましたが、そういえば、わたしと父は母を殺すために出たのであって……。「まだです」「ふざけんなよ」 兄は、上半身裸、ステテコ姿です。「殺すまで帰ってくるんじゃねえよ」 口が悪くなっている兄。目も血走っています。「あっ」 思わず声が出たのは、階段から足のようなものが見えていたからです。兄も死体を? だとすれば誰?「おっ、これは……」 兄は体でそれを隠すように階段へ。わたしも追います。小説(官能小説) ブログランキングへ★便所虫の歌★DLSiteはこちら。DMMはこちら。アマゾンKindleはこちら。週末にマリカとして苦痛を求めてさまようOL。掲示板で出会う相手の要求のままに、激しい苦痛にもだえ苦しむ。その間の記憶は失われ月曜には勤務先に出社する。そこに別のマリカが挑戦してきた……。どちらがホンモノか決着をつけることに。負ければ永久便器となる。★折檻部屋の風夏★DLSiteはこちら。DMMはこちら。アマゾンKindleはこちら父母を香港のゴミ焼却所で惨殺された風夏は、大金持ちから一転して逃げ回る生活に。最後に学生時代の女友達を思い出して訪ねる。卒業前に奴隷になると誓っていたのだ。だが女友達は風夏に過酷な指令を出し続ける。ノワール風味の漂う作品。今日のSMシーン紗倉まな Mたらし S級美少女連れ込み密室調教紗倉まな300円~ |