嫁愛 1【体験談】

重い体を引き摺りながら、疲れた足取りで玄関の前に立つ。鍵を取り出して、ドアを開けると意外にも奥の方で明かりが点いているのが見えた。(消し忘れか?)そう思いながら無言で靴を脱いで部屋に入ると、「おかえり」と言って嫁が迎えてくれた。「まだ起きてたの?」驚いて、そう言ってから「ただいま」と付け足した。あと一時間足らずで零時になろうかという頃。お互い仕事を持っていたから、普段なら、こんな時間まで彼女が起きている事は稀だが明日は、二人とも休みだった。そうでなければ俺も、もう少し帰りが早い。毎日この時間が続くようなら、きっと体を壊してしまうだろう。「まぁね。ちょっと待ってみた」そう言ってから急いで食事の仕度をしようとする彼女。それを手で制してから、少し食べてきた、と告げる。すると彼女は、不満げな様子も見せずに用意してあった夕食のおかずをタッパーに入れて冷蔵庫にしまった。それから近付いてきて、「お風呂入りなよ」と言う。俺は訝しく思ったが、顔には出さずにいた。普段なら、これは、「エッチをしよう」というサインだ。勿論、そうじゃない場合もあるだろうが、結婚して丸三年が過ぎようとする頃になれば、そうか、そうじゃないか、の違いは何となくわかるものだ。