行きつけの小ぢんまりとした居酒屋に訪れる政夫・京子夫妻と何時しか意気投合し、互いに連絡先を交換する仲となって久しくなっていました。政夫は大手企業の中間管理職の51歳で私の1歳下。京子は福祉系の派遣社員の46歳。2人には子供がなく、周囲が照れてしまう程の仲の良さ。政夫はどちらかと言えば派手に飲んでいつしか飲まれるタイプ。決して強くはないのであろう。それに対し、京子は淡々と飲むタイプで、間違っても乱れることのない方。実はこの京子。顔立ちは地味系で、お世辞にも美人とは言い難いが、私の初恋の少女の面影が時折見え隠れし、初対面の時から心惹かれていました。我社の歓送迎会が企画され、二次会までは顔を出していたものの、三次会以降は若者だけに場を譲り、近場の小料理屋へ身を潜めるように移動しました。カウンター10席と小上がりのテーブル1卓しかない、私好みのタイプの店は絶えず客が出入りし、繁盛していたが、何より嬉しいのが、一見の私が遠慮せずに会話を楽しめる店でした。どれほど飲んだだろうか。小上がりのグループから1人の女性が仲間に別れの挨拶をした後、覚束ない足取りで出入口付近に座っていた私の方へと歩み寄ってきた。間違いなく京子であった。 |